金属のイオン化傾向の大小関係を利用した金属樹の実験は,時間とともに成長する金属の結晶が美しく,多くの人の目を引く実験です。そのため様々な実験方法が模索されてきました。このページではおすすめの実験方法を3例紹介します。
この実験では金属イオンを含む水溶液を使用します. 実験終了後の廃液は, 事前に処理方法を確認しましょう.
数々の実験書等で紹介されてきた一般的な方法です。様々な実践方法が紹介されていますので,ここでは硫酸銅水溶液と亜鉛版を用いた銅樹の例を紹介します。
使用器具:シャーレ,ろ紙
使用試薬:硫酸銅(Ⅱ)水溶液(0.5 mol/L),亜鉛片(5~10 mm四方)
実験方法
① 硫酸銅(Ⅱ)水溶液を5 mLとってシャーレに移す
➁ シャーレにろ紙を敷いて全体を浸らせる
➂ ろ紙上に亜鉛片を置き,時間経過で銅樹のできる様子を観察する
金属樹の成長する様子は肉眼でも観察可能ですが,顕微鏡を用いることによって金属樹のフラクタルな構造を詳しく観察することができます。


また溶液の金属イオン濃度や陰イオンの化学種,金属片の種類などによって金属樹の成長速度が変化するので,手持ちの試薬や実験時間に適したものを採用しましょう。以下はその例です。

0.5 mol/L 硫酸銅(Ⅱ)水溶液 + 亜鉛片(左から置いた直後,5分,10分,15分後)

0.1 mol/L 硫酸銅(Ⅱ)水溶液+ 亜鉛片(左から置いた直後,5分,10分,15分後)

0.5 mol/L 硫酸銅(Ⅱ)水溶液+ アルミニウム片 (左から置いた直後,5分,10分,15分,3日後)

0.5 mol/L 塩化銅(Ⅱ)水溶液+ 亜鉛片(左から置いた直後,5分,10分,15分後)
通常の実験でつくる金属樹は非常にもろく,少しの振動で形が崩れてしまいますが,金属イオン溶液を寒天で固めればこの問題を解決することができます. 金属の結晶が立体的に広がることも特徴の一つです.
使用器具:ビーカー(100 mlと200 mL)
使用試薬:塩化銅(Ⅱ)水溶液(0.5 mol/L),亜鉛板,粉末寒天,砂糖
実験方法
① 200 mLビーカーに粉寒天1 gと塩化銅(Ⅱ)水溶液を50 mL入れ,ビーカーを加熱して粉
寒天を溶かす.
➁ 粉寒天が溶けたら砂糖を75 g加えて加熱しながら溶かす.
➂ 100 mLビーカーに②の寒天溶液を入れて室温になるまで放置する.
④ 好きな形に曲げた亜鉛版を➂のビーカーに入れて冷蔵庫か氷水で冷やす.
➄ 寒天が固まったら常温で数日放置する.


砂糖を入れなくても金属樹は成長しますが,寒天が濁ったような見た目になるので金属片の置き方を工夫する必要があります.


また砂糖の代わりにグリセリン20 mLを加えてもよいでしょう.
ボロノイ図とは,ある距離空間上の任意の位置に配置された複数個の点(母点)に対して,同一距離空間上の他の点がどの母点に近いかによって領域分けされた図のこと(引用:Wikipedia)で,都市設計に使われることがあります. またキリンやカメ,トンボなど自然界にもボロノイ図に似た模様を見ることができます.
寒天と複数の金属片を用いることで,個々の金属片からの金属樹の広がりからボロノイ図模様を作ることができます. またこの実験は化学と数学の要素を含んでいるので、STEAM教育に取り入れやすいのではないでしょうか?
使用器具:シャーレ(内径85 mm),ラップ,油性ペン,ビーカー,コピー用紙
使用試薬:粉末寒天,硝酸銀,銅片(5 mm四方)
実験方法
① シャーレに水を10 mLと粉末寒天を0.2 g入れて加熱する.
➁ 寒天が溶けきったら硝酸銀を0.8 g入れて加熱をやめ, ガラス棒で素早く撹拌する.

➂ しばらく放置して寒天が固まったら銅片を寒天上の適当な場所に置く.

④ シャーレの上からラップをかけ,置いた金属片と同じ位置に油性ペンで印をつける.
⑤ ラップの上からコピー用紙を敷き,鉛筆かボールペンでラップ上の印を写し取る.
⑥ 紙上の点を基準としてボロノイ図を作成する.
① 一つの点から近い点どうしを点線でつなぐ.

② すべての点線の垂直二等分線を引く(二点が重なるように折り目をつけて線を引くと楽).

➂ 余計な線を消してすべての点が境界線で隔たれるようにし, 色を付けて目立つようにする.

⑦ 十分に成長した銀樹の様子を観察する(写真は3日後のものだが, 1日置けば十分成長する).

⑧ シャーレの下に⑥の紙を敷いて, 自分が書いたボロノイ図と銀樹の境界線を比べてみる.
画像からわかるとおり, 成長した金属樹が別の金属樹と触れ合っていません. 不思議ですね.
参考文献
・荘司隆一,化学と教育,62(10),2014,496-497
・中浜信子,家政学雑誌,17(4),1966,203-206
・鈴木絵里香,小室里花,田邉三紀子,” 擬二次元ゲル中の金属葉の成長”,TX テクノロジー・ショーケース イン・ツクバ 2008,2008,103
・“ボロノイ図”,Wikipedia,2022-8-30
・Akihiro Oyamada,“自然の中の数学、ボロノイ Math in Nature,Voronoi”,ヨモツネット,2015-07-26
・Yuka Sato,” 私たちの未来都市を自然とコミュニティから考える 第1部|「ボロノイ図」が都市設計に応用可能なワケ”,amanaiNSIGHTS,2019-07-30
・A,” ボロノイ図を描く”,OMOCHA JOURNAL,2020-4-19
